こうもり

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陰謀、仮装、そして突然のどんでん返しに満ちた物語である『こうもり』は、「ワルツ王」ヨハン・シュトラウス2世による本物のオペレッタの宝石であり、世界中で何千回も上演されてきた有名な名作です。この作品が当時のウィーン市民階級の歓喜を全開で映し出しながら上演されていないオペラ劇場は、世界中どこにもないと言ってよいでしょう。ヨハン・シュトラウス2世(1825〜1899)は、オッフェンバック本人からオペレッタ作曲を勧められました。彼はこの新しい舞台ジャンルが、オーストリア軽音楽の王であるシュトラウスに最もふさわしいと考えていたのです。

19世紀の劇場は、まだエリートのための施設ではなく、さまざまな背景の人々が集まる場所でした。彼の最初のオペレッタ『インディゴと40人の盗賊』(1871年初演)はすぐに世界へ広まり、パリ(1875年)、ロンドン(1877年)、ニューヨーク(1891年)にも進出しました。続く『ローマの謝肉祭』は1873年のウィーン万国博覧会のために作曲され、この作品もヨーロッパ各地で大成功を収め、当時の深刻な経済不況でさえその勢いを止めることはできませんでした。

そして『こうもり』が誕生します。原作はフランスのもので、有名なメイヤック=アレヴィのコンビ(ビゼー作曲『カルメン』のリブレット作家でもある)が1872年に喜劇『ル・レヴェイヨン』を発表しました。作品はパリの最新流行に強い関心を寄せていたウィーンのカール劇場の経営陣の目に留まり、カール・ハフナーがドイツ語に翻訳し、舞台を「オーストリアの大都市近郊の温泉地」(恐らくバート・イシュル)に移しました。

しかし、この台本はなぜかライバル劇場であるアン・デア・ウィーン劇場の支配人、マクシミリアン・シュタイナーのもとに渡ってしまいます。最終的に出版社のグスタフ・レヴィが、この作品をオペレッタに作り替えてシュトラウスに提供するという名案を思いつきました。そこから展開は急速に進みます。ハプスブルク帝国がほぼ財政崩壊に陥り劇場も深刻な危機にあったため、リヒャルト・ジュネーはすぐに台本の最終稿の契約を結び、シュトラウスはヒーツィングの別荘に6週間籠ってこの有名なオペレッタを書き上げました。

1874年4月5日、アン・デア・ウィーン劇場での世界初演はあまり好意的に受け止められず、批評家たちは「ワルツとポルカの寄せ集め」と評しました。しかしその年の6月、ベルリンでの上演は大成功を収め、同年ニューヨークでも上演されました。観客はついに本作が真の傑作であると認めたのです。

 

あらすじ

第1幕

ガブリエル・フォン・アイゼンシュタインの妻ロザリンデは困ったことに直面していた。一つは役人を殴ってしまったことで5日間の禁固刑を申し渡されてしまった夫。夫は刑の取り消しを要求したが、ブリント弁護士の下手な弁護でかえって刑期が延びてしまい、8日間の禁固刑にされてしまう。

それだけでも災難だが、家の前ではかつての恋人アルフレードが、毎日のようにセレナーデを歌ってロザリンデに思いを寄せている。しかも今夜ロザリンデの夫が刑務所に入るので、その留守にロザリンデと逢引しようと企んでいる。ロザリンデの方もまんざらでもないが、なにぶん世間体が気になるのでどうすることもできない。

そこへ夫の友人ファルケ博士がやってくる。博士はアイゼンシュタインに、「舞踏会が今夜、ロシアのオルロフスキー公爵邸で開かれる、そこで楽しんでから刑務所に入ればいい」と勧める。しかし「妻はどうする」と言ってためらうアイゼンシュタイン。博士は「奥さんなんて黙っておけばいくらでもごまかせる」といってそそのかす。すっかりその気になったアイゼンシュタインは、舞踏会に行くことを承知し2人は手を取って「ランラララ~」と歌いながら小躍りする。

博士が去ると、アイゼンシュタインは妻に礼服を出すよう命令する。夫は自分だけ楽しみに行くことを察知した妻は、それなら自分も……と決心し、小間使いのアデーレに今夜は暇を出す。アデーレはおばさんの具合が良くないので今夜暇が欲しいと言っていたが、実は姉[注釈 2]から手紙で誘われて、オルロフスキー邸の舞踏会に行くつもりだった。喜んで去っていくアデーレと夫を見送ったロザリンデ。そこへアルフレードが現れる。久々の浮気にロザリンデもまんざらではなく、2人は一杯飲みだす。ところが、あろうことかそこへ夫を連行しに来た刑務所長フランクが現れる。

夫がいないのに男を家に引き入れたことが知られるととんでもないことになる、と思ったロザリンデは、とっさにアルフレードを夫に仕立てる。後でどうにかするからというロザリンデに、アルフレードもアイゼンシュタインに化けることを承知して、身代わりに刑務所に連れて行かれる。

 

第2幕

オルロフスキー邸では華やかに舞踏会が行われていた。この家の主オルロフスキー公爵は、ファルケ博士に「何か面白いことは無いか、退屈だ」と言う。ファルケは、「今夜は“こうもりの復讐”という楽しい余興がある」と告げる。

やがて、女優オルガと名乗ってロザリンデのドレスを着込んだアデーレや、フランス人の侯爵ルナールを名乗るアイゼンシュタインが現れる。アイゼンシュタインは、女優オルガにむかって「家の小間使いにそっくり」と言うが、彼女の方は「こんなに美しく優雅な女が小間使いなわけがないじゃない」とアイゼンシュタインをさんざんからかう(「私の侯爵様」)。

そこへ刑務所長フランクもシュヴァリエ・シャグランの偽名でやってくる。お互い知ってる限りのフランス語でめちゃくちゃな挨拶をするフランクとアイゼンシュタイン。そして仮面をかぶってハンガリーの伯爵夫人に変装したロザリンデが現れる。

ロザリンデは、夫が刑務所に行かずに遊んでいる上に、アデーレが自分のドレスを着ていることに腹をたて、夫をとっちめることを決意する。一方、アイゼンシュタインもこの伯爵夫人に目をつけ、自慢の懐中時計を取り出して、妻とはまったく気が付かず口説きだす。この懐中時計を浮気の証拠にしようと考えたロザリンデは、言葉巧みにこれを取り上げる。そこへ人々がやってきて、仮面の女性の正体を知りたがるが、彼女はハンガリーの民族舞踊チャールダーシュを歌って「私はハンガリー人よ」と言う。

さらに人々はファルケ博士に「“こうもりの話”をしてくれ」と言う。3年前ファルケとアイゼンシュタインが仮面舞踏会に出かけた帰りに、アイゼンシュタインが酔いつぶれたファルケを森に置いて来てしまったときの話だった。そのため翌日、ファルケは日も高くなった中、仮面舞踏会のこうもりの扮装のまま帰宅する破目になり、それを見た近所の子どもから「こうもり博士」という変なあだ名をつけられたのだった。

こうして話の種は尽きないが、オルロフスキー公爵の合図で晩餐が始まる。夜も更けると舞踏会を締めくくるワルツが始まり、みんなが華やかに歌い踊る。やがて午前6時の鐘が鳴り、アイゼンシュタインはあわてて「出頭する時間だ」といって去っていく。フランクも刑務所に帰らなきゃとばかりに、すっかり仲良くなった2人して会場を後にする。同じところに行くとは全く思わず。

 

第3幕

刑務所の中ではアルフレードが相変わらずロザリンデへの歌を歌っている。朝っぱらからスリポヴィッツ(チェコ産の度数の高いブランデー)でしこたま酔っ払った看守のフロッシュがくだを巻いていると、そこへ同じく酔っ払ってご機嫌なフランクが戻る。酔っ払い同士が掛け合い漫才をしていると、アデーレとイーダがやってくる。アデーレは「自分は小間使いだけれど女優になりたい、パトロンになって」とフロッシュに売り込みをかけるが、ルナール公爵が来たというので動揺したフランクはアデーレたちを留置場の空き部屋に入れる。

牢屋での再会に驚くアイゼンシュタインとフランク。お互いの素性を確認するものの、既に牢にはアイゼンシュタイン氏が入っているんだが、とフランクから言われて驚くアイゼンシュタイン。そこにアルフレードの要請でフロッシュが呼んだブリント弁護士が来たので、アイゼンシュタインは様子をうかがうためにブリントから服をむしり取って追い出し弁護士に変装する。刑務所を訪れたロザリンデは昨日の経緯をアイゼンシュタインが変装している弁護士に話す。同席したアルフレードも助言を求めるが、2人の態度に堪忍袋の切れたアイゼンシュタインが正体を現し妻とアルフレードをなじる。ところが妻は例の奪い取った時計を取り出して見せ、逆に夫をぎゃふんと言わせてしまう。追い詰められたアイゼンシュタインは「俺はアイゼンシュタインじゃない!牢屋にも入らん!」とわめきちらすが、そこにファルケ博士とオルロフスキー公爵その他舞踏会の客たちがぞろぞろ現われる。

ファルケ博士が「昨日舞踏会に誘ったのは、すべて私が仕組んだこと。3年前の“こうもりの復讐”ですぞ。」と種明かしをすると、では浮気も芝居なのか、と安心するアイゼンシュタイン。アルフレードは「ちょっと実際とは違うけどまあいいか」とつぶやく。アデーレはオルロフスキーがパトロンとなって女優になることになり、最後はロザリンデの歌う「シャンパンの歌」で幕となる。

プログラムとキャスト

音楽: ヨハン・シュトラウス2世

台本:
カール・ハフナー、リヒャルト・ゲネー
— アンリ・メイヤック & ルドヴィック・アレヴィによるヴォードヴィル
『ル・レヴェイヨン/ニューイヤーズ・イブ』(1872)
および
ユリウス・ローデリヒ・ベンディクス作のファルス
『Das Gefängnis/監獄』(1851)に基づく

歌唱テキスト翻訳: オトン・ジュパンチッチ
台詞翻訳・脚色: セタ・クノップ

指揮: エアトン・デザンペレール
演出: クレシミル・ドレンチッチ
振付: ルーカス・ツシュラッグ
美術: アンドレイ・ストラジシャル
衣装: アラン・フラニテル
照明: アンドレイ・ハイディニャク
音響: ルカ・ベルデン
映像投影: ステラ・イフシェク
言語コーチ: マリヤ・フィリプチッチ・レジッチ
合唱指導: ジェリカ・ウルチニク・レミツ
コンサートマスター: グレゴル・トラヴェン

副指揮者: ヤコブ・バルボ
演出助手: シモナ・ピンテル
振付助手: オルガ・アンドレーエワ、ステファン・カプラロユ
美術助手: ヴァネサ・ガルポヴァ
衣装助手: アナ・ヤンツ

レペティトール:
カヨコ・イケダ、ヴィシュニャ・カイガナ、イレナ・ザイェツ、イリナ・ミリヴォイェヴィッチ、ステファン・パヤノヴィッチ、マリナ・ジョンリッチ(合唱)

プロンプター: デヤン・ゲベルト、ウルシュカ・シュヴァラ・カフォル
舞台監督: ロマン・プシュニャク

キャスト

アイゼンシュタイン: マルティン・スシュニク k. g. / マテイ・ヴォヴク
ロザリンデ: モイツァ・ビテンス・クリジャイ / マルティナ・ザドロ
フランク: イワン・A・アルンシェク / マルコ・フェルヤンチッチ
アルフレード: アンドレイ・デベヴェツ k. g. / デヤン・マクシミリアン・ヴルバンチッチ
ファルケ: ロク・バウチャル / スラヴコ・サヴィンシェク
ブリント: グレゴル・ラヴニク k. g. / エドヴァルド・ストラフ
オルロフスキー: マルガレータ・マティシッチ / ノリナ・ラドヴァン / アニャ・ゼムリャリチ
アデーレ: エヴァ・チェルネ・アヴベル k. g. / ニナ・ドミンコ / シュテフィツァ・グラッセッリ
イーダ: イレネヤ・ネイカ・チュク / ロラ・パヴレティチ
フロッシュ: ゴイミル・レシュニャク・ゴイツ k. g.

SNGリュブリャナ国立歌劇場 オペラ・バレエ団(合唱、バレエ、管弦楽)

フェスティバル・リュブリャナ

SNT リュブリャナ歌劇場バレエ団

ご来場について
劇場には時間に余裕を持ってお越しいただくことをお勧めします。クロークで荷物を預け、プログラムを確認し、席を見つけ、お友達と交流する時間を確保するためです。他のお客様も同じように行動されるため、開演時刻の少なくとも20分前にはご到着ください。

所在地と駐車場
ご来場の際は、スロベニア国立劇場オペラ・バレエ リュブリャナの建物が市内中心部に位置していることをご考慮ください。近隣の通りには3か所の有料公共駐車場があります。最寄りの屋外駐車場は共和国広場にあり、その下には駐車ガレージもあります。また、徒歩3分の場所にある会議広場の地下にも駐車ガレージがあります。トルディノバ通りにある駐車場までは少し長めの徒歩移動が必要です。

劇場のドレスコード
私たちのドレスコードは、出演者、他のお客様、そして自分自身への敬意を表すものです。かつて、劇場、オペラ、バレエ、コンサートを訪れる際には、男性はスーツとネクタイ、女性はエレガントなドレスが求められていました。現在では規則はそれほど厳しくありませんが、カジュアルすぎる服装やスポーツウェアでのご来場はお控えいただくようお願い申し上げます。

クローク
クロークは下層ロビーとドレスサークル階にございます。

携帯電話と腕時計
公演を妨げることなく、お客様自身と他のお客様が楽しめるようご協力をお願いいたします。騒音を発する携帯電話や腕時計はご自宅に置いていただくか、公演開始前に電源をお切りください。

飲食物の持ち込み
外部からの飲食物の持ち込みは劇場内では禁止されています。

Festivalul Ljubljana
Franz Gotz
© Darja Stravs Tisu
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