カーチャ・カバノヴァー

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PreviousAPR 2026

 

愛と心の痛みを描いた、焼けつくように美しい演出の強力な物語。

 

不幸な結婚に縛られたカーチャは、情熱的な不倫に引き寄せられます。荒れ狂う嵐の中で、彼女は自分の行動に圧倒されます。ダミアーノ・ミケレットの生々しい演出は、カーチャの罪悪感と絶望の核心に迫り、愛と命そのものとの間で選択を迫られます。

 

チェコ語で歌われ、英語の字幕付き。

 

 

あらすじ

時と場所:1860年代のカリノフ(ロシアのヴォルガ河畔の町)

 

序曲

この序曲はオペラを開始する音楽として最も印象的なものの一つと考えられる。長く延ばされた低弦の和音が短い旋律的フレーズに膨らんで、8つの音からからなるティンパニの動機ところで休止する。続くアレグロの動機はテンポを速め、鈴の響きと渦巻くようなフルートの音型を背景にして、オーボエに引き継がれる。この音型は後にチホンの出発を表すことになる。カーチャの運命は彼の不在の間に決せられるのである。これとは対照的なエスプレッシーヴォの主題はカーチャを表すが、それは奏でられるたびにティンパニの主題に抑え込まれる。このオペラの展開の縮図となっている。

 

第1幕

第1場

カバノフ家の前のヴォルガ河畔にある公園、ある日の午後

ヴォルガ河畔は温暖な陽光を浴びて落ち着いた佇まいを見せている。カバノフ家に雇われているクドリャーシがカバノフ家の家政婦グラーシャにヴォルガ河の景観を賛美している。すると商人のジコイが甥のボリスを怠け者と罵倒しながらやって来る。女主人はカバノフを探している。グラーシャが公園にいると答え、家に入る。ジコイが公園に向かって去って行くと、クドリャーシが残されたボリスにどうしてあんな風に言いなりになって我慢しているのかと問う。すると、ボリスは事情を静かに語り始める。彼は両親の死後、祖母の遺言により叔父のジコイのもとに身を寄せ、敬意を示したなら、自分と妹がジコイの遺産を相続できると定められていたのだ。ボリスは親戚の所にいる妹のためにも、自分がこの屈辱的な状況に耐えなければならないのだと悩みを打ち明ける。ボリスは、恋の悩みも打ち明け始める。ボリスは今、恋情を持っている女性は運悪くも人妻なのだと迂闊にも打ち明けてしまう。驚いたクドリャーシはそんな危険な恋は諦めるべきだと諭される。オーケストラが間奏を奏でる間[注釈 3]、二人はボリスが恋焦がれるカーチャをじっと見詰める。カーチャはカバノフ家の女主人カバニハ、息子のチホン、カバノフ家の養女ヴァルヴァラと共に教会から帰ってきたところである。ボリスは咄嗟に身を隠す。カバニハは息子のチホンに恒例のカザンの市場へ旅に出るよう命令する。カバニハは最近チホンは嫁の肩ばかり持って、母親である自分を冷たく扱っているとチホンに不満をぶつける。チホンも妻のカーチャも真っ向から否定し、カバニハをなだめる。しかし、カバニハはカーチャに刺々しく悪態をつき、カーチャが家の中へ入った後も、嫁の態度が悪いとチホンをくどくどと責め続ける。カバニハが家に入った後、事の成り行きを見ていたヴァルヴァラまでがカーチャへの同情を示す。そして、全く不甲斐ないチホンを責めるのだった。

 

第2場

カバノフ家の居間

ヴァルヴァラはカーチャが結婚する前の自分がいかに気楽で幸福だったかを懐かし気に語るのを聞いている。さらに、カーチャは毎日姑にいびられる生活を思うと鳥のように自由に空を飛んでいきたくなると語る。そんな時は教会で幻覚に捕らわれることがあると言う。その瞬間周期的に表れる抒情的な旋律が奏されるが、カーチャ思いが高揚すると、何かの災難に襲われるような気がすると語ると、音楽のテンポが速まり、音高も上昇する。ヴァルヴァラはカーチャが何か病気を患っているのではないかと言う。音高のテンポが緩み、ただの病気と言うことではないと言い、さらに、心の深層について明かし始める。悪魔が自分に囁くのだと言うと、コーラングレで始まる曲がりくねった主題が突き刺さるように奏でられる。ヴァルヴァラはカーチャにそれは一体どういうことなのかと問う。カーチャは「眠れないのよ」と打ち明ける。カーチャは夫以外の男声を愛してしまったと言う。ヴァルヴァラがすぐさまカーチャに共感を示すと、カーチャは誰かが自分を抱きしめるようにして囁き続け、その男と駆け落ちすることを想像してしまうと言う。ヴァルヴァラはカーチャさらにその先を聴きたがるが、カーチャは話そうとしない。そこへ、旅支度をしたチホンがやって来る。カーチャは夫に抱きつくと、自分の悪い妄想を打ち消して欲しいと言わんばかりに自分も連れていって欲しいとせがむが、カーチャの本心など微塵も理解できないチホンは我慢して待っていてくれと冷たく断り、分別を持って欲しいと言う。それなら、せめて貴方のいない間、他の人とは関わらないように言いつけて行って欲しいとカーチャが懇願する。すると、姑のカバニハが現れて「妻たるもの礼儀正しく姑をたて、良く働き、他の男には目をくれてはならない」と夫が留守中の妻の心得をカーチャに命じていけと息子に言う。チホンは弱々しく抗議するものの逆らえず、屈辱的にも命令を復唱させられ、場を立ち去る[注釈 4]。夫婦の間には何の言葉もなく、別れを惜しみチホンに抱きつくカーチャを見たカバニハは人前で妻が夫に抱きつくとは罵倒するのだった。

 

第2幕

第1場

カバノフ家の一室、午後おそく

ヴァルヴァラとカーチャが一緒に刺繍をしていると、カバニハがうちの嫁は夫が長旅に出ているのに寂しがる気配もないと忌々しそうに小言を言い立ち去る。ヴァルヴァラの主題(ヴィオラに官能的なフルートとチェレスタによる裏拍の和音が伴う)が意味のある形で現れ、これにより雰囲気が一変する。ヴァルヴァラはカーチャがボリスを愛していることを察し、自分が愛人のクドリヤーシと逢引するために入手しておいた鍵をカーチャに意味あり気に渡す。「あの人」に会ったら、木戸まで来るように言いましょうかと言って立ち去る。罪の意識に苛まれながらも、鍵をポケットに入れてしまう。これは運命なのだと悟り、ボリスに会う決意を固めると、カーチャの心は期待で膨らんでいく。カーチャが立ち去ると、酔ったジコイがカバニハを思わせぶりな態度で、口説きながら入って来る。カバニハはそれほどはっきり拒絶するわけではないが、ジコイのだらしなさを見下し、道徳心を持てと諭すのだった。ヤナーチェクは最後の部分にコミカルな間奏曲を書き加えている。

 

第2場

カバノフ家の庭の木戸の外、夏の夜

その日の夜。短い前奏曲はためらうような主題と抒情的な主題とが交互に現れる。クドリャーシが恋人のヴァルヴァラを待ちギターを弾いている。彼は二連からなる歌〈ある朝早く少女が散歩に出た。〉を歌う。すると、ボリスがやって来る。クドリャーシがこんな所で何をしているのだと尋ねると、ボリスはある娘からからここに来るよう言われたと答える。クドリャーシは彼とカーチャとの逢引を悟り、ボリスに人妻にとってこれは危険なことだと警告する。ヴァルヴァラは〈川の向こうに私のヴァーニャが待っている〉を歌いながらやって来ると、クドリャーシは2番の歌を歌う。ヴァルヴァラはボリスにここで待つようにと言うと、クドリャーシと共に川のほうへ去って行く。そこへカーチャが現れる。ボリスは彼女の顔を見るなり自分の恋情を抑制できずに、カーチャの手を取って、愛を告白する。カーチャは困惑しながらも後ろめたそうに拒否する素振りを見せる。前奏曲の抒情的な主題が奏でられると共に、抵抗を止めると、ボリスは激情を顕わにする。カーチャは罪悪感に苛まれるが、ボリスへの愛を確信し、自ら破滅への道を選択する。ヴァルヴァラが戻って来て、あっちにいい場所があると言うので、ボリスとカーチャはそこへ向かう。夜が更けてきたので、ヴァルヴァラが頃合いを見計らって、2人を呼び戻す。ヴァルヴァラとカーチャは木戸を通り抜けこっそりと帰って行く。輝かしい和音の中、幕が下りる。

 

第3幕

第1場

2日後、ヴォルガ河を見下ろす廃墟、夕暮れ時

クドリャーシと友人のクリギンが雷雨の中、廃墟で雨宿りをしているところへ、ボリスの叔父ジコイもやって来る。クリギンは廃墟の壁に辛うじて見とれるくらいの地獄の責め苦の壁画が描かれていることに気づく。クドリャーシとジコイがたわいのない議論を交わしている間に嵐はおさまり、人々は外へ出ていく。すると、ヴァルヴァラが現れ、クドリャーシを呼び止めると、次に遠くに姿の見えるボリスを呼びよせる。ヴァルヴァラは2人にチホンの帰りが早まって、カーチャが罪悪感で錯乱しており、夫にすべてを打ち明けようとしていると言う。そこへカーチャがやって来ると、ボリスとクドリャーシはとりあえず身を隠す。ヴァルヴァラは激しく動揺するカーチャを落ち着かせようとするが、通行人たちはカーチャの様子がおかしいので不審に思う。そこへカバニハとチホン、ジコイが現れる。嵐が一層激しくなる中、カーチャは皆の前にひざまずいて、自らの不貞を告白してしまう。カバニハが開いては誰かと問うと、ボリスだということも告げると、そのまま気を失ってしまう。その後意識を取り戻したカーチャは、夫の手を振りほどいて外へと飛び出し走り去る。外は再び嵐が激しくなっていた。嵐の音が続く中、次の場面に入る。

 

第2場

夕闇が迫るヴォルガ河畔

行方不明のカーチャを捜すべく、チホンとグラーシャ現れる。チホンはカバニハが妻を生き埋めにしろと言っているが、手など出せるはずがないと言う。ヴァルヴァラが現れて、部屋に閉じ込められた、カバニハは何を言っても聞く耳を持たず、危険だと訴える。恋人のクドリャーシは一緒に逃げようと言われ、2人は新しい生活を夢見てモスクワへ旅立ってしまう。その頃カーチャは、死を覚悟し彷徨っていたが、何もかも忘れてボリスと一緒になりたいという儚く虚しい夢も捨て切れずに持っていた。カーチャが一人姿を現すと、オーボエとヴィオラ・ダモーレの抒情的な主題を背景に、自分の告白を悔い、それが無益であったばかりでなく、ボリスにも屈辱を与えてしまったことを嘆く。そこへ当のボリスが現れるのだが、彼は叔父のジコイからシベリア行きを命ぜられたと別れを告げ去っていく。カーチャはボリスには自分をこの状況から救ってくれる力はないことを思い知らされる。彼女は復讐心に燃える姑と酒浸りの夫のもとに残されることになる。反復されるティンパニと小鳥のさえずりのような動機の中で、カーチャは花で覆われた自分の墓に小鳥たちが訪れるさまを想像する。もう全てが終わったとの想いを抱きカーチャは胸の前で十字を切り河へと身を投げて、不倫の恋を清算する。 河から女性の溺死体があがったと、通行人が騒ぎたてる。チホンが駆けつけ、冷たくなった妻を抱き締め、全部母が悪いのだとカバニハを激しく責める。カバニハは、無表情で「有難うございました。皆様のご親切に感謝します。」と集まった人々に礼を言う。歌詞の無い合唱が響き渡り、静かに終焉となる。

プログラムとキャスト

公演時間
時間は変更される場合があります。
レストランオープン*

 

日程:
8月3日、6日、9日、12日、14日、17日、20日、23日

 

庭園開放:午後2時
オペラ開始:午後4時
休憩(90分)*:午後5時05分
オペラ再開:午後6時35分
オペラ終了:午後7時05分

 


カーチャ・カバノヴァ - カテリーナ・クネジコヴァ
カバニチャ - スーザン・ビックリー
ディコイ - ジョン・トムリンソン
ボリス - ニッキー・スペンス

 

指揮者 - ロビン・ティッチアティ
演出 - ダミアーノ・ミケレット
セットデザイナー - パオロ・ファンティン
衣裳デザイナー - カルラ・テティ
照明デザイナー - アレッサンドロ・カルレッティ
オーケストラ - ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
合唱団 - グリンデボーン

 

この公演で使用されるカーチャ・カバノヴァの音楽版は、Universal Editionより出版されています。

グリンデボルン

グリンデボーンの創設者、ジョン・クリスティと妻オードリー・ミルメイは、1934年にここで最初のフェスティバルを開きました。今日、私たちの世界的に有名な講堂と卓越性の基準は、ジョンのオリジナルの精神への証です。 。


その後の数年間で、グリンデボーンは1962年に続いてクリスティ家族、ジョージクリスティ、そして2000年に現在のエグゼクティブチェアマン、彼の息子Gusによって率いられ続けた。

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